まさかの就職先が…

仕事・転職・副業

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若いころから好奇心が旺盛でいろんな職を経験してきた私だが、その中でも一風変わった仕事先がオカマバーだ。ちなみに私はれっきとした女性である。その頃はちょっとしたニューハーフブームだったのだろうか。新宿みたいな繁華街ではなく、私が生まれ育った下町にも2,3件のオカマバーがオープンした。

私は飲み仲間に流行りのオカマバーがあると誘われ、そのうちの1件のドアをくぐった。するとお約束通りドスの利いた大きな声で「あらぁ、おねぇっさん、いらっしゃ~い」と、声とは裏腹な可愛らしい口調でフィリピン人のニューハーフが出迎えてくれた。最初は初めて見る世界に驚いてしまったが、女性よりも気が利き、それでいてユーモア抜群のニューハーフ達を私はすっかり気に入ってしまった。

ホストやキャバクラのように客層が偏っておらず、いつ行っても老若男女で賑わっていたので、いつの間にか私は一人で行くほどの常連になっていた。ある日遅い時間にいつものように一人でお店に行くと、普段は不在がちなオーナーが来ていた。そこで私は口説かれた。と言っても残念ながら女性としてではなく、一緒にこの店で働かないかと。女子の私を誘うってどうゆうこと…と最初は心底びっくりしたが、ちょうど転職を考えていた頃だったし、何よりも来るたびに楽しくて仕方がないそのお店の魅力に好奇心が抑えきれず、引き受けてしまった。

引き受けたものの…初出勤は…

初出勤の日、オカマバーで働くって、しかも女子が…そんななかなか経験出来ないことに私の心はドキドキする気持ちと緊張する気持ちとで忙しかった。しかし心配する必要はあまりなかった。しょっちゅう飲みに行っていたので、オカマちゃん達とは最初から楽しく仕事することができたのだ。

そして働くようになって知ったのだが、そこの従業員はニューハーフだけでなく、ホスト風のノーマルの男性、女装のみのお笑い担当ノーマル男性、厨房にはこれまた水商売とは縁のなさそうな普通の女の子が働いていた。そしてずっとオカマだと信じて疑わなかったホステスの一人が、女性だったことが衝撃だった。オカマバーではあったが、男女中間関係なく働いているそのお店は、私が思っていた以上に一風変わった、しかし最高に楽しいエンタテインメントの場であったのだ。

オカマちゃん達も、フィリピン、タイ・中国・ロシアとフィリピンのハーフなどなど多国籍で、日本に居ながらいろんな文化に触れられた。仕事が終わるとお店の上に住んでいたオカマちゃんのところでフィリピン料理をもてなしてもらったり、お下がりの民族着っぽいホステス衣装をもらったり。あんなにたくさんの外国語に触れることもこの先もうないかもしれない。そう言えばあの頃友達によく「何その変なしゃべり方!オカマじゃないんだから」と突っ込まれた。

私は仲良くなったオカマちゃんを「お姉さん」と呼び、甲高い語尾上がりの言葉遣いも知らず知らずマネしていたのだ。一年ほど働いたのち私は辞めてしまったが、このお店もほどなくして流行らなくなり、ずいぶん前に閉店してしまった。たった一年だったが、私にとって本当に濃い、充実した期間になった。あとから聞いた話だと、オーナーは誰かれ構わず声をかけるスカウトマンだったらしいのだが、ここで働けたことは私の一生の財産である。

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